ポタリングの歴史は思いのほか長く、1957年の4月にサンスター自転車(現サンスター技研)によって発行されたたのしいサイクリングという小冊子の中で、既にポタリングという言葉を確認することができます。たのしいサイクリングでは、ポタリングをクラブラン、ツアーとともにサイクリングの種類として紹介しています。近年の自転車ブームの中で生み出された造語であるかのように思われがちなポタリングですが、半世紀以上の歴史があることになります。
ポタリングの語源は「ぶらつく」とか「ほっつき歩く」という意味のポッター(potter)とされています。ポタリングが「気ままな自転車散歩」と言われるようになったのは、語源となったポッターによるものですが、実際にポタリングしてみると、大きな違和感を感じるはずです。
自転車はとても速い乗り物なので、ゆっくりしたペースであっても、2時間あれば30km、半日で50km、一日あれば80kmを超える距離を移動できてしまうのですが、これだけの距離になると、とても気ままな散歩気分で走れるものではありません。
仮に気ままな散歩気分で走ろうものなら、遠くまで行き過ぎて帰れなくなってしまったり、いつの間にか同じところをグルグル回ってしまったりして、ポタリングどころではなくなってしまうからです。そもそもサイクリングは「自転車で遠乗りすること」ですから、ポタリングであったとしても、気ままに散歩するような感覚で走れるものではないのです。
ですからポタリングによる有酸素運動をできるだけ長く続けたいと思ったら、それなりの準備と装備をしなければいけません。だから「散歩の自転車版」というよりは「ウォーキングのサイクリング版」といったほうが、実際のイメージに合っているのではないかと思います。
参考文献:追憶のカタログ展 サンスター自転車
ポタリングにもサイクリングと同様、自宅周辺をポタリングする自走、自宅から離れた場所でポタリングする輪行と車載の3つの形態があります。
自走は自宅を基点にして自宅の周辺エリアをポタリングする形態です。自宅がポタリングのスタート地点とゴール地点になります。自走はいつでも手軽にポタリングができる反面、コースが限られてしまうので、マンネリしてしまうのが難点です。
輪行は公共交通機関を利用して自転車を運んでポタリングする形態です。自宅とポタリングするエリアの間を、鉄道、バス、船舶、エアラインなどの公共交通機関を利用して自転車を運びます。スタート地点とゴール地点を自由に設定できるので、川沿いや海岸線などをポタリングする場合は輪行が便利です。
車載はクルマで自転車を運んでポタリングする形態です。車載してポタリングする場合は、クルマを駐車した場所からスタートして、その場所にゴールすることになりますから、周回ルートをポタリングすることになります。いわゆるビワイチ(琵琶湖一周)やカスイチ(霞ヶ浦一周)など「〇〇イチ」と呼ばれている湖畔や半島を周回するコースをポタリングする場合は車載が便利です。
ポタリングをはじめて間もないころは、風を切って自転車を走らせるだけでも楽しいものですが、新鮮味が薄れてくるとすぐに物足りなさを感じるようになってきます。それはポタリングには、タイムや距離を競い合うレースや、自転車で各地を巡って旅をするツールと違って、有酸素運動すること以外に目標や目的が無いからです。だからポタリングをもっと楽しみたいと思ったら、自転車を走らせること以外の何か別のテーマをプラスすることをお勧めします。
ポタリングのテーマとしてポピュラーなのは、ポタリングしながらお花見を楽しむ花ポタ、クルマや路線バスの代わりにポタリングしながら観光地を巡る旅ポタ、鉄道に関連した施設を訪ねる鉄ポタ、そしてご当地グルメを味わうポタグルメなどがあります。ポタリングしてパン屋さんを訪ねてパンハンティングをしている人もいます。いずれにしてもポタリングの楽しみ方は人それぞれです。自分にあったテーマを見つけてみてはいかがでしょうか。